現役ヘルパーが本音で語るバリアフリーの真実

北川 美也子 ホームヘルパー1級
北川 美也子

在宅サービスのうち訪問介護の現場で勤務。実際の体験から得た知識を基に工夫を重ね、要介護者にとってやさしい介護方法の普及を進めている。

1. イメージと現実のギャップ
2. 車椅子は段差に強い
3. スロープは危険

4. 入浴のしやすさ
5. 便器の位置の重要性

1.イメージと現実のギャップ

 現場で介護の仕事に関わっていると、自分でも思いがけない経験をすることがよくあります。その中には、バリアフリーという言葉から多くの人が抱いているイメージと、現場での体験を通じて得た事実との間に、かなりのギャップがあることに気付きます。

 バリアフリーという言葉の中に、「こうでなければだめだ!こうあるべきだ!」という理想を詰め込み過ぎたために、画一的なイメージが出来上がったのかもしれません。

 でも、介護の現場で求められる対応は一人ひとりそれぞれ違っていて、どれひとつとして同じものはないのです。

 そこで、バリアフリーの常識のように考えられている中で、実際は間違っている、疑問に感じていることをいくつか紹介したいと思います。

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2.車椅子は段差に強い

 バリアフリーといえば、段差を失くすことと考えている人がほとんどですから、車椅子を使うときには、段差が邪魔だと思ってしまいがちです。

 でも、車椅子が段差に強いことはあまり知られていません。「え、どうゆうこと?車椅子は平らな所でしか使えないんじゃないの?」とほとんどの人が疑問に感じるはずです。ところが、在宅看護の経験がある人は、車椅子が段差を苦にしないことを知っています。

 ご存知のように、車椅子の前輪は小さいのですが、後輪は前輪とバランスが取れないくらいの大きさです。どうしてあんな大きな後輪が付いているかと言うと、段差をクリアするためのものなんです。まず前輪を上の階に乗せて、後輪を階段の蹴上げにくっつけ、後から前に押すだけで上げることができます。

階段の高さは、普通16センチぐらいですが、この程度であれば楽に上げることができます。若い人なら30センチぐらいでも平気です。車椅子は、段差を苦にしません。

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3.スロープは危険

 最初に車椅子のお話をしましたが、車椅子を利用して家へ出入りするためにスロープが必要だと思われています。ところが、自分で車椅子を押した経験がある人ならわかるのですが、若い男の人でも大変しんどい作業です。

 まして、老夫婦の一人がもう一人を乗せて押そうとしても、途中で動かせなくなって二人とも事故に遭ってしまいかねないんです。のぼるときだけでなく、下がるときはさらに危ないのは言うまでもありません。

 身体の片方がマヒしていても歩ける人には、スロープは有効ではないかと思われています。でも、脳卒中や片側マヒの人はスロープを歩くことは難しいのです。なぜなら、足首がまっすぐ伸び切った状態ですから、かかとがつきません。

 スロープをのぼるときは、つま先しかつきません。逆に下りるときはつま先が下がって滑ってしまいます。いずれにしても危ないのです。

 そういうことを知らないケアマネジャーが、安易にスロープにしようと言って、せっかくお金を掛けて作っても何の役にも立たなかったということが現実にあるのです。

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4.入浴のしやすさ

 介護の現場で一番大変なのは、入浴の介助です。特に浴槽の大きさやかたちなどによって随分と手間が違ってきます。家庭の浴槽といえば、4つの側面のうち一つが傾斜しているものが多く使われています。

 この浴槽では寝たきりの人は傾斜している方に身体が倒れ、足は浮いてしまいバランスを取ることができません。

一方、和式の1.5人浴槽とよばれ、正方形で幅も狭いし、奥行きもないのがありますが、実はこれが一番良いのです。中に入った時に足はブロックできるし、安定した姿勢を保てます。

 最近は、介護専用の浴槽もあります。背中側が傾斜しているもの、側面がカーブしているものや浴槽の中に段が付いているものなどいろいろです。でも、せっかくの設備や機能も結局使わないことが多く、かえって邪魔になってしまいます。

機能やデザインは良くなっても、それは健常者が使うことを前提にして作られているからです。肝心の要介護者や障害者の実態に合った形や使い勝手は、あまり考慮されていないのが実情なのです。

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5.便器の位置の重要性

 車椅子でトイレを利用する場合に、入り口の有効幅が問題にされます。「75センチ以上は必要だ」、「いや80センチ以上なければダメだ」とそれぞれです。でも、一番大事なのは入り口の幅ではなく、便器の向きです。

 ほとんどの家では、図Aのようにトイレの正面奥の中央に便器がありますから、便座に座るためには180度回転しなければなりません。室内が狭いと介助者も入れないので、トイレで用を足すことが難しくなります。

 ですから介護保険を利用してトイレを改修する場合は、図Bのように便器の向きを変えれば、90度の回転ですみます。車椅子の肘当てが外せるタイプであれば、重症の人でも少しの介助でトイレが使えます。トイレ全体のスペースを拡げることもなく、工事も難しいものではありません。

図A。180°の回転が必要 図B。90°の回転でOK
図A 図B

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